ちょっと見逃せないタイプの「誤約」(といってよい)ものもあって、面白いのできいてきいて。
問題。列挙するのは何?
複数訳が Python 翻訳内であてられていた。
- 「このセクションでは以前述べられた変更とコードの変更が必要となる他のバグフィックスを列挙しています」説
- 「このセクションでは前述の変更とバグフィックスにより必要となるかもしれないコードの変更を列挙します」説
無論真意は後者である。ただし後者は「文法解釈」からは逸脱している。英文法から忠実に訳出すれば(「以前述べられた」が稚拙なのはともかく)前者「のみが」正しい。そして果たして、前者訳では「言ってることとやってること」が違うことになる。だって実際列挙してるのは「必要な変更」ですから。残念。
長くて分解しにくいので英文を単純化するとこうである:
つまり列挙するのは A であって B ではない、となる。だから前者だけが正解だ。…、というふうに翻訳を考えるのが「ダメな翻訳」の典型、だったりすんのよ、ということが、今回言いたいこと。
なんかね、いくつかあったんだわ、2.7 訳に逆らって「正しくしてやるもんね」として「正しい文法解読」で破壊されてしまった正しい翻訳が。気分が今ひとつわからんのだが、「(がっこで習った) 英文法に逆らった良い意訳」を攻撃的に直そうとする人がいるみたい。もちろん善意からやってるんだろうからあまり悪くは言えないけれど、けど元の翻訳に手を入れる以上は、ちゃんと責任感じてやって欲しいとは思う。オリジナルの翻訳者に失礼でしょうが。
良い翻訳はここからもう一歩出ないとダメです。先の単純化した英文は、「リストします、B が必要な A を」なので「列挙するのは A」だけれども、「原因⇒結果」という因果関係を理解すれば、「リストします、A による(原因) B (結果)を」と解読して良いわけです。そして当然この解釈のほうが正解なのは後続の文章を読めばわかる。
これは「英文法」の範疇ではないかもしれないけれど、「英文読解」の話であるし、そもそも「文章理解」(文脈把握)の話でもある。たぶんこの手の話は英語学習の良い参考書には書かれそうな気もしないでもないけれど、自然言語解読なんぞはそういうもんでないかいね。「英文法だけが正義」なんかじゃないことなんか、日常の日本語考えたってわかること。