読んぢゃいやん

いつもの。

「宝石の国」世界に入ってしまうと、抜け出すのが難しく、ほかのものを視聴するのに余分にエネルギーが必要になるのが困る。なので「好発進」したはずの「精霊の守り人」に触手が伸びず。まだ観てない。

「宝石の国」世界に入ってしまうと、抜け出すのが難しく、ほかのものを視聴するのに余分にエネルギーが必要になるのが困る。けれども「魔法使いの嫁」の世界にはすんなり入れる。段々ちゃんと好きになってきている。なんか若干「夏目友人帳」にもみえてきた。この、性根では優しい目線が好きなのだろう。夏目友人帳ほどわかりやすくはないけれど。

「宝石の国」9話。観てない人のためにもネタバレになるようなことは書けないけれど。冬パートの続きで目一杯泣かされたあと、春パートで「涙返せよ」となるあたりが、さすが「宝石の国」というか、「らしい」。楽しくて切ない。半泣きで半笑い。

予告だと来週はボルツの回、なのかな、というふうにみえるが、原作を読んじゃってる人がダイヤモンドの回と言ってて…うぅ、余計な情報入れるんじゃなかった。


要約しないで。もしくは左脳理解しようとしないで。と、「宝石の国」の評価を見ていると思うことがある。

「宝石の国」に限らず、多くの「正統派少女漫画」の文脈を持つマンガは、ここのところ何回か書いているように、(主に女性の)「精神世界」を描いているものが多い。見かけ上そうは見えなくても。「宝石の国」はこのことについては比較的わかりやすい方だと思う。だから幹となるアイディアやプロットだけ取り出してしまうと「陳腐」になる作品が多いし、実際はほぼ全ての少女漫画がそれだと思う。

多くの少女漫画原作のドラマ化や映画化が、単純な恋愛ものを除けば失敗してしまいがちなのは、「精神世界」、つまり行間を読むことが要求される表現をうまく扱えなかったものによるものだ。マンガの台詞だけ抽出しても名言集になってしまうような対象であってさえ、ダメな場合は失敗するのは、やはりマンガ固有表現の「間」を取り違えたり、役者の解釈が足りなかったりするからなのであろう。

「宝石の国」のアイディアやプロットが陳腐か、といえばこれはそうでもないとは思う。実際日本ではこれまであまり記憶にないアイディアであることには違いはない。奇抜か、と言われれば別にそうでもないと思うけれど。萩尾望都ばかり例にして恐縮だが、例えば「海のアリア」はまさに架空の地球外鉱物にして生命体(ベリンモン)を主人公とする物語だ。展開に関しても、2週間ほど前に最初に宝石の国の話題を出した際に言った通り「ギムナウジムもの」と言ってしまえば「ほぼその通り」だ。決して目新しいものではなくて、どちらかといえば使い古されているタイプの展開だ。そんなわけだから、その「陳腐とは言えないし、奇抜といえなくもない」というスレスレの線が、かえって「左脳理解」タイプの人には混乱を招くかもしれない、と思う。そうではないんだよ、と。

少女漫画世界の精神世界に浸るには「頭をからっぽにしつつ頭をフル回転させる」という高等技術が必要だ、なんてことを思うことがある。読み方、というよりは感じ方、なのだが、五感をフル稼働させて没入し、自分の内面世界の記憶の海とマンガ世界を融合(リンク)させていく、という感じだろうか。この融合作業のために脳がフル回転する。リンクすべき自身の経験がない場合にこれは新しい自らの経験かのごとくアップデートし、新たな自分を獲得する。そんな感じだろうか。

男なんだから当たり前かもなぁ、という典型的な反応をしている評価が結構あるのはこれはもちろん(主にジャンプ的)「少年マンガ」の理解から入ってしまうことが多いからである。「宝石の国」を少年マンガ理解で読むなら、これはたぶん典型的なヒーロー物語に「思える」だろう。視聴するしないに関係なく、物語の筋だけ何かの媒体で知ってしまったら、ありきたりな「ダメ主人公の成長物語」にしか見えないよ、これ。特に「改造」をともなって成長していくあたりは、これはドラクエ的 RPG 世界観で理解しちゃった方が手っ取り早いだろう。実際そういってしまえばそういう話ではあるし。そして「そうなのだ」と思い込んで(もしくは他の理由で引っかかって否定したいがためだけに「そう思い込みたくて」)、「ありきたりだ」「手垢がついている」と言い捨ててみる。たぶん絵がダメな人は最初からアウトだし、「女子的」な感覚がダメなら絶対ダメな作品なだけなんで、どうせなら素直にそう言えばいいのに、「かっこいいから」そういうそれっぽい理由で批判したがる、まぁなんというかちょっと「あぁもったいない」残念な人たちは、確かに多いようだ。

少女漫画読者は少年漫画読者ほどバカではないので、「明示的に描かれていないこと」を読み解くのが得意である。宝石の国の場合、アニメが毎話必ず何か大きく事件が起き続けてきたのでわかりにくいのだが、ストーリー全体としての展開は実は非常にスローでじっくりゆっくり進んでいる。「ダメな主人公が次第に成長して覚醒する」なんてのはほんと多いであろ、けど8話まで「イライラする」と思ってもおかしくないほどに、主人公のフォスフォフィライトは成長しない。普通ここまで成長しないと、多くの読者・視聴者はすぐに飽きてしまう。少年漫画の場合は普通これは許されない。せめて単行本の1巻の1/3くらいには主人公は「土台バージョンは完成」しきっていなければならない。「この漫画のルールの提示」ということである。

少年漫画理解で驚くかもしれないのは、「覚醒フォス」が「成し遂げない」ことなのではないのか、と思ったりもした。多くの少年漫画ヒーローは、「覚醒して初めて事を成し、物語が転がり始める」。「宝石の国」も物語は転がり始めたけれど、やはり重きを置いているのは「獲得と消失」そのものであって、物語ルールの確立とはおよそ関係がない。アイテムを入手したら攻撃力が +10 された、という感覚で「宝石の国」を「理解」するなら、これほどにクソつまらない RPG はない。(実際こういう理解をしている反応の実物を読んだ。)

少年漫画理解でも、「寄生獣」になぞらえるのは理解できたりする。ていうかワタシもフォスがちょっとシンイチに見えてきた。なんてな。

あぁ…来週までまた待つのか…。一週間は長い。