言葉の派生ってのは面白いもんだと思う。
富山ではコヅクラ、フクラギ、ガンドウ、ニマイヅル、ブリ。研修医の実習生をアメリカではインターンという。インターンを終えると専門分野の研修医(レジデント)になる。
intern と resident を英辞郎で検索すればそれぞれ以下のとおり:
1 【1他動】
2 ~を抑留する、拘禁する
3 【1名】
4 〔戦時の〕被抑留者◆【同】internee
5 【2自動】
6 インターン[実習生]として働く
7 【2名】
8 〈米〉〔研修医の〕インターン◆大学の医学部を卒業した後に1年間の実地研修を受ける研修医。通例この後で専門分野の研修医(resident)となるが、residentになった最初の1年にこの実地研修を行う場合もある。◆【同】medical intern ; 〈英〉foundation house officer◆【参考】resident
9 見習い、実習生
1 【名】
2 〔特定の場所に長期間住む〕居住者
3 〈米〉〔専門分野の〕研修医◆インターンとして研修を受けた後で、2~7年にわたって専門分野の研修を受ける研修医。◆【同】resident physician ; 〈英〉specialist trainee◆【参考】intern
4 〔老人ホームなどの〕入居者
5 〔海外駐在の〕外交官
6 〔海外駐在の〕諜報員、情報部員
7 〈英〉〔旧植民地の〕総督代理、理事官◆知事や総督の補佐をする役目だが、実質的な最高権限を握っていた。
8 《動物》〔渡りや回遊をしない〕定住動物
9 【形】
10 〔一定場所に長期間〕居住している
11 〔仕事としての〕住み込みの
12 〔性質などが〕固有の、内在する
13 《動物》定住する
14 《コ》〔記憶装置内に〕常駐する
みたらわかる通り、intern はもともとは「抑留する、拘禁する」意味のようだし、regident は「居住する」意味のようだとわかる。regident はたとえば NHK ニュースの二ヶ国語放送で災害関連のニュースで「居住者」の意味でしょっちゅう出てくる日常語であったりするが、一方で「レジデンス」がつくアパートやマンションが多いので笑けるネタにもなったりする。
てことはだ。研修医実習生は抑留される身分であり、そして晴れて研修医として居住者となるわけだな。実習生は人質でもあり、なんにせよ「居住者としての市民権を得ていない抑留者」なわけだ。なるほど。
いつからかはわからないが一般企業でも「インターンシップ」なんてことをやっている。世間一般には、もしくは学生にとっては「自発的に経験を学べる機会」(企業にとっては学ばせてあげる慈善事業)みたいな印象を持たれていそうな気がする。実際体験した印象(企業側ね)だってその「イメージ」からそう遠いもんではない。けどもちろん本音は原義の「抑留」なのはそりゃぁ明らかである。言葉で誤魔化したってこれは「青田狩りの寸止めバージョン」に過ぎない。囲い込みたいのである、企業としては。(有能な人材と思えば、ね。そうでないならほんとに慈善事業だ。)
さて。この記事になぜに「Python」のタグが付いているかと言うと…。
Python 2.x には intern、Python 3.x には sys.intern てのがある。意味や使い方についてもちろんワタシは理解はしていたのだけれども、「intern としか言いようがない」というか、日本語でなんて言えばいいの? てのがどうしても出てこなくてな。そういうの、いくつかあって、「intern」「inspect」「introspect」がその代表。
ほぉ。「隔離」と訳してある。ふむぅ。上手かもしれないし、なにか「むず痒い」気もする。イメージとしてはむしろ「囲い込み」の方が近い。あるいは「抱え込み」かな。後者だと修飾語が必要かな、「内部抱え込み」。
Python の intern がやってくれることは「文字列のシングルトン化」に似ているのだが、ただシングルトンにするだけなのではなくて「シングルトンであるという (identity ベースの比較で済むという) 事実を Python 自身が活用する」ということも込みなので、一言でシングルトン化で済ますわけにもいかず、結局なにかしらの言葉を発明する必要があるのは間違いないわけである。それを英語圏の人々は intern と呼び、そして日本人は弱る、と。
(Python の intern の個人差がある効能については石本さんのこれでも読んでくれい。)