このサイトの作り方(コンテンツ編)

このサイトの作り方(コンテンツ編)

前置き

10年ほど前というのは、「良質なコンテンツ」に巡り合うことは大変難しかった。例えば C++ の技術情報を探すと技術的な嘘ばかりが目に付いて、インターネットからの情報をあてにしようなどとは思わなかった。20年ほど前というのは逆に、数は少なかったが、「ここに行けばまともな情報が手に入る」という guru の巣窟があって、逆に探し物には苦労はしなかった。それを見つけるまでの苦労は大変だったけれど。今と言うのは、20年前の「集約」と10年前の「発散(拡散)」が非常に良いバランスになっていて、「良い情報」にきちんと人が集まるようになった。Google などの努力の成果、なのであろう。

そういうわけで、私のように書き物が好きでも、ネタなんか気軽に生み出せない。だとするならば、ワタシが発信できる情報って、なんだろうか?

ワタシ、の個性

昔から何を書いてもエッセイのようになってしまう。本職エッセイストにはかなわないが、どんな技術文書を書いていてもエッセイ要素が出てきてしまって困る。知人からは「エッセイスト」とか「コーヒーブレイクだけを読んでいる気持ちになる」などという評価を受ける。日常業務ではこの個性は邪魔でしかない(下手すると設計書やプログラムのコメントでも出てしまうのであるから)が、こういったブログでは許されるであろう。

調べ物や実証実験など、研究的なことが好きである。得意かどうかは別として、下手の横好き、好きなのだからしょうがない。

自分が一番の読者である

これに尽きる。興味があること、必要にせまられていること、自分のために、自分の技術レベルに合わせて書く。それだけ。

そういうわけで、ワタシは別に高いスキルを持っているわけではないけれど、「自分の技術レベルに合わせて」しか書かないので、初心者に向けて懇切丁寧な記事を書くことはないと思う。あるとすればそれは、自分が初心者のレベルにある技術に向かうとき。ただ、たとえば新しいプログラミング言語に取り組む場合に、「プログラミング言語初心者にでもわかる」ようにはやはり書けない。なんだかんだでそれなりには色んなプログラミング言語を渡り歩いてきたので、「まさかこんなことくらいわかるだろう」というレベルが無意識に高めになってしまっていて、無自覚に簡単に説明を済ませてしまう。

自分のために書き、そしてそれが偶然誰かの役に立てばいい。その程度のことである。

職業プログラマは余裕がなさすぎる

30歳以下の若者が自発性を失ってきているのとも相関がありそうであるが、「余裕がない」というより、発展を自ら望んで努力する文化が薄くなってきているとでも言うか、そんなのもあり、「知らないことが随分多い子だなぁ」にお目にかかる率が確実に増えている。となると、「知らないがゆえの非生産性」にお目にかかる率も自然増加する。そしてそのまま育ってしまい、本当の生産性とはなんなのか、考えもしない大人になる。

専門書を真剣に読破するタイプの技術者も年々減っていると感じている。確かに大抵はインターネットからの情報で済むようになったが、昔より簡単な情報だけに頼る率が増えてきたのではないか(昔からそうだといえばそうだが、比率の問題である)。

インターネットの世界からはバラ色にみえるかもしれないこの業界のうち、大半の職業プログラマはこんなだと思う。限られた一部だけが進化を続け、成功してゆくのであろう。そして「大半の職業プログラマ」は心底疲弊していく。

「職業プログラマ」が無駄に忙しいのは本当である。「ブラック企業」と名指しされるような場所でなくても。このサイトで書くことは、だいたいはこれらの人々に向けてのものになるであろう。つまりは彼らは「手っ取り早い完全なサンプルコード」と「手を出す価値があるかどうかの手っ取り早い評価」を探している。新しく取り組む技術というのは「手始めるのが大変」で、始める価値がないものには目もくれたくない。知的好奇心からなんにでも手を出す人々ばかりではない。ワタシの知的好奇心がこれらの人々にとって、多少なりともお役に立てればと願う。



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