テクニカルタームなんかなくなっちまえ

極論。

色んな誤訳があるもんだなと、翻訳プロジェクトに深く関われば関わるほど思う。「The shape array is read-only for the consumer.」を「図形の配列は、使用者にとっては読み取り専用です。」と訳してみたり、「index」をデータベースの索引だと思い込む訳をしてみたり(確か「インデクス化」と訳されいて、データベースの索引だと思い込んだのだろうと推測)。

あまり致命傷でもないというか、「まともな技術者なら即座に誤訳とわかる」ものなんかは、まぁあんまり口うるさく言うこともなくてな、そしてまともな技術者は誤訳も織り込み済みで読解しちゃうからね。上の2つなんぞは「バカどうしにしか被害を及ぼしあわない」ので、まぁいいんだけどさ。

実際一番マズいのが誤訳とはわからない大誤訳。日本語が綺麗で意味が通るのに真逆の解釈、というのが最も被害が甚大。こうならないようにホント神経すり減らしながら翻訳してるわけですよ、翻訳参加者は。だからなんでそういう「おバカ」な翻訳者が平気で混ざってくんのかがちょいと理解出来ない。「英語読んだ方が数億倍マシ」なんて翻訳なんか、ない方がいいじゃないか。誰のために何のために参加しとるん? (あえて言うけれどそれは「自己満足」という。)

誤訳のタイプには何種類かあるとは思うのね。ただ、「なんぢゃごりゃぁ」と言いたくなる誤訳には一定割合で「テクニカルターム症候群」がある。それが「shape=図形」「index=データベースの索引」な。そして「テクニカルターム症候群」の根底にあるのが、「技術的な背景の咀嚼不足」、なんだけれども、これってのは結局のところ「脳内で映像が浮かんでいない」ということがあるんだと思っている。

index は翻訳語としてはケースバイケースになるんだけれども、どんな訳語があたるにせよ、原義の「索引/添え字」から脳内イメージが離れることはない。(本の索引ページの一項目に指差しするイメージ。)

shape は無論過半数は「図形」と訳してもいいかもしれないが、日本語の「図形」意味集合が「形状」よりもずっと狭い意味しか持たないことに配慮しなければならない。日本語の「図形」は字句通り「図の形」しか意味しない。「椅子の形状」と「椅子の図形」は日本語では完全に異なる意味になる。(後者の日本語の場合きっと「椅子の形をした図形」と補わないと意味不明だろうが、そうすれば「椅子の形状」≠「椅子の図形」であることは自明だ。)

なーんてことばっか書いてるね、なんか。けど何度でも言いたいのですこの話。なぜってこれ、「英語の話/翻訳の話」だけの問題じゃあないから。「若者教育に苦労」の話の一つとしてだな、この手の「インチキ理解」との闘いを常に強いられておったわけですよ。ヒドイ若者になると、こっちが苦心して技術的に正しい用語を使えば使うほど「独自に意味付けした用語」よわばりし出すわけよ。あのな知らんのはお前だけ、とこっちは言いたくてしょーがないのだが、「自分の知る世界だけが世界」に陥っていることに気が付かない若者は結構多いのです。あ、すまん、若者にはもちろん限らない。割合の話ね。「昔はこんなにバカばっかりじゃなかったよな」。(昔も一定数いたバカのタイプが、比率が高くなっているという話。)

なんか前にも書いた気がするんだけど、今の30代前半以下ってさ、「格差」デカすぎない? 上はワレワレの世代の「遥かに上を」行き、下の比率は上がり、そして「下は遥かにドン底」。ほんとどうにかすべきよ、教育で。(苦しむのはその下ではなく上なのですよ、尻拭いばっかするハメになるの。)