ストレス発散に心理学を使う心理

書いてしまって失敗したなぁと思ってるエントリがあってな。

ダニング・クルーガー効果、なんだね。

アクセス解析ではっきり出ちゃうのよね。これに辿り着く人、「ダニング・クルーガー効果」をピンポイントで検索してる。想像つくんだよ。馬鹿を馬鹿にするためのストレス発散用途の心理学。

もっと注意深く書けば良かったと思っている。というのも、思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方をワタシが薦める理由こそが、「自分に向ける心理学」に徹していること、なのだから。

数ある心理学の「読み物」のほとんど全てが、他人批判のための道具にばかり徹するのはこれは、「そうすると売れる」からだ。例えば「シロクマのことだけは考えるな」は、立ち読みはしてみたらいい。「こんな人いませんか?」とばかり言っていることがわかるはずだ。

思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方が一般向け心理学本として優れているのはまさにこの点にあって、「貴方自身がより良く生きるための心理学」であろうと腐心していることにある。

ワタシが失敗した、と切に思うのはそう、「ダニング・クルーガー効果」という、最もわかりやすく、最も他人批判のための道具に活用しやすいもの「だけを」取り上げてしまったこと、である。まさかピンポイントでこうまで「ダニング・クルーガー効果」を狙い撃ちで検索して辿り着いてしまう人が出てくるとは、書いたときは思いもしなかった。ちなみに「「ダニング・クルーガー効果」を狙い撃ちで検索」するような行為の裏にある心理は、「確証バイアス」だ。

「確証バイアス」はなんだかテレビドラマ「探偵の探偵」の中に登場してしまったので、最近知った人もいるかもしれないが、これは心理学の枠を超えてなお昔から有名なもので、例えばトム・デマルコの「デッドライン」の中に、このような台詞で登場する:

「彼は自分の覚えたいとおりに覚えたのよ。頭の中で管理者と同一視しているパットン将軍が戦闘で唯一知恵を働かせる存在であり、ほかの人は全員「手足にすぎない」と思っていたいのね。」
「はあん」
「パットン将軍は全然そんなじゃないわ。戦場では知恵を働かせない。知恵はすでに周りの部下たちに浸透している。戦闘が始まるときには、パットンの仕事は終わっているの。そして自分でもそれをわかっている」

悪用、というか、「他人批判のための心理学」として、ダニング・クルーガー効果ほどわかりやすく相応しいものはない、ということが、要するにワタシが「失敗したなぁ」と思っている理由。つまり、「ダニング・クルーガー効果」の意味を知らずに検索しているのではなかろう、ということだ。「そうそう、馬鹿だよな」を強化したいのだ。

その向きにはかなり残念なエントリであろう、ワタシの「ダニング・クルーガー効果」は。そしてこのエントリはめでたく「スルー」され、正しく他人批判する他の読み物で強化されてゆくのだ。ワタシのエントリは PV だけはいっちょまえに増やし続け、訪問者にとっては「なかったこと」にされ続けるのである。これを「書かなきゃよかった」と言わずしてなんと言おうか。恥ずかしいったらないわ。

でもまぁ、大した PV にならないうちにこれを書く決心が出来て、良かったかな、とは思う。

心理学が伝えたいこと、をさ、インターネット検索やら「○バーまとめ」やらでわかった気になるのは危険だぞ。それこそが確証バイアスを増強する行為そのものだからな。情報収集が容易になった現代、かつてよりも何十倍も何百倍も確証バイアスの危険性が増しているのだ。


ちなみに、ワタシが思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方を薦める理由は、実際はもう一つある。それは、「著者の本職が心理学者ではない」こと。孔子の論語を思い出してもらえばいい。孔子は何も「著さなかった」が、弟子たちが論語を残した。専門家でないからこそ出来る「優秀なレビュー」なんじゃないかな、と思うわけだわ。だからこそわかりやすく、シックリ来るのだ。(ま、「まとめ」つぅ意味では「ネ○ーまとめ」と違わないんだけど、違いはもちろん「密度」ですわよ。)

そうそう。見出しの「ストレス発散」ですが、思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方には、これについても面白いことが書いてあるので、是非手にとって読んでみて欲しい。衝撃的